ユークリッド原論をどう読むか(1)
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 北 秀和
(大阪工業大学特任教授、
 元大阪高等学校数学教育会会長)

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(1)はじめに

ユークリッドの原論は、
 その名を最も良く知られたものの一つであることは
 恐らく間違いないであろう。
と同時に、
 今の時代では、
 そうしたものの中でも
 一番読まれたことのないものの一つであることも
 恐らく間違いないであろう。
しかし、
 人類史においてその価値は
 きわめて高いこともまた間違いなかろうから、
 何らかの形で数学に係わるものであれば、
 ぜひとも読んでおくべきであろうと思い、
 どこまで連載できるかはなはだ心もとないが、
 逐条的に紹介することを試みる。

まず最初に、
 読み始める際、
 前もって頭に入れておいたほうがよいと
 思われることを述べておく。
(1) 一般用語の延長として、
  定義されていない言葉が多い。
 例えば、
  部分と全体、幅、端、一様に横たわる、
  傾き、重ねる、囲まれる、方向、限られる、
  切り取られる、限りなく延長する、有限、
  加える、引く、など。
(2) 定義として記述されている
  線の端(定義1ー3)、面の端(定義1ー6)に関する記述は、
  定義というよりは
  「線の端は点であるものとする」という設定と
  見た方がよいと考えられる。
(3) 2つの線の交わりが点であり、
  2つの面の交わりが線であることが
  明示的には示されていない。
 しかし、
  これらは、
  定義1ー3定義1ー6から導かれると考えられる。
(4) 公準1ー4は、
  文面上からは公理のように見えるが、
  直角というものが
  一般的に存在するということを
  公準1ー5に先立って示していると見る。
(5) 公準1ー5は、
  2直線の交点の存在条件を示している。
 交点は、
  存在が保証されなければ、
  とることができない。
 その意味で
  図形要素を描くための前提と見る。
 したがって、
  以下において、
  交点の存在を主張する命題については、
  作図用命題である
  と分類している。
(6) 公理1ー7公理1ー8は、
  等・不等の概念の定義である。
 その上で、
  等・不等に関わることを
  公理(共通概念)として
  整理していると見る。
(7) 公理1ー8の補足が
  推論において果たす役割は大きいと見る。
(8) 公理1ー9
  同一性を主張するものとして
  公理であると見る。
(9) 平行線公準とかかわって、
  これまで、
  公準・公理とは
  証明を必要としないほど自明なことと
  解釈されてきた。
 しかし、
  公準は、
  点(交点)、線分、直線、円、直角など、
  図形の存在や作図可能性を示し、
  公理は
  等・不等・同一性の定義、確認方法、推論方法など、
  論理性を示し、
 また、
  定義は、
  原論の世界での、
  ものごとの定義、設定を示している、
 と考えた方が、
  原論当時の数学のイメージと
  あっているのではないかと
  考えられる。
 もちろん、
  今日までの数学が
  原論を公理論的に構成してきたことの意義を
  否定するつもりはないし、
  原論自体が
  そのような志向性を持っていたことも
  認められるが、
 そもそもの発想の出発点は
  上記のようなところにあったのではないかという
  問題意識である。
 どうであろうか。
(10) 原論の論証は、
 命題の設定と推論の設定・結果を根拠とし、
 定義、公準、公理、
 証明済みの命題を論拠にして
 進行する。
まずは、
 原論の世界において
 原論を理解するのが望まれる。
しかし、
 今日のように
 根拠と論拠に
 (1)とか命題1ー1とか
  ラベルをつけて参照する習慣はなく、
 論拠は簡潔な言葉で示され、
 根拠は明示されることはない。
そのため、
 少し複雑な証明となると、
 推論の根拠を参照するのが容易ではない。
そこで、
 推論から離れた場所にある根拠についても、
 推論の設定は(a)(b)等で、
 それまでの推論の結果は(1)(2)等で
 ラベルをつけて参照しやすくした。
 
次に、
 フレーム対応のブラウザで
 逐条解説を読まれる場合、
 左上が、
  図や定義・公準・公理・命題の
  参照に、
 左下が、
  目次に、
 右が、
  本文に
 となるように設計されている。
図を、
 左上に表示させるには
 左下の
  目次にある図をクリックするとよい。
 命題にある図をクリックしてもよい。
目次には、
 命題を
  標語風に簡潔に表現している。
このあたりの雰囲気を
 つかんでいただくと
 読みやすくなると思われる。
なお、
 本文を読むに当たって、
 次のことに留意いただきたい。
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