ユークリッド原論をどう読むか(1)
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ユークリッド原論
第1巻
命題1ー1(作図・正三角形)
線分
与えられた有限な直線(線分
)の上に
等辺三角形をつくる
こと。
-
第一段階として、
一般的な命題を言葉で最初に提示している。
以下の段階を含めて、
原論の論証スタイルである。
-
原論では、
線分を有限な直線として
ここで定義している。
(以下、定義の補足(命題1ー1)(線分)という。)
-
直線は定義1ー4
による。
- 等辺三角形は定義1ー20
による。
与えられた線分をAB
とせよ。
このとき
線分AB上に
等辺三角形をつくら
ねばならぬ。
-
第二段階として、
具体的な作図命題の形で提示している。
-
以下、
第三段階として、
作図の手順を最後まで示している。
このとき、
たとえば、
円の交点Cが存在するのか
というような
近代的な議論は考察されていない。
中心A、半径ABをもって
円CDBが描かれ、
-
公準1ー3(作図.円)
にあるとおり、
点Aとそこらかの距離ABで円が描かれており、
例えば、
中心A、半径BEではないことに
注意すること。
-
円(A、AB)
をとり、
C、D;点[円(A、AB)]
となっている。
また
中心B、半径BAでもって
円ACEが描かれ、
-
公準1ー3(作図.円)による。
-
円(B、BA)
をとり、
C、E;点[円(A、AB)]
となっている。
そして
これらの円が互いに交わる
点Cから、
-
定義1ー15(円)
により、
円は一つの線を境界(端)
として
囲まれた平面図形である。
点Aは円CDBの内部にあり、
点Eはその外部にある。
命題の補足3(定義1ー14)(図形と直線の交点)
により
内部のAと外部のEは
線(弧)で結ばれている
ので、
交点をもつ。
その点をC
としている。
以上のことを自明
として扱って、
証明の最初からCを登場させている
ため、
論証の筋道が見えにくくなっている。
なお、
交点がいくつあるかは、
不問である。
出発点の段階では、
交点の個数を確定できない。
-
C;交点[円(A、AB)、円(B、BA)]
点A、Bに線分CA、CBが結ばれた
とせよ。【・・・(a)】
-
公準1ー1(作図.直線)による。
-
以上が、第三段階である。
-
線分(C、A)、線分(C、B)
をとる。
そうすれば、
-
以下、
第四段階
として、
作図されたものをもとに、
論証される。
点Aは円CDBの中心である
から、
ACはABに等しい。
また
点Bは円CAEの中心である
から、
BCはBAに等しい。
そして
CAがABに等しい
ことも先に証明された。
-
前々節による。
-
CAとACが等しいことは
公理1ー7(等しい)
による。
-
CA=AB
となっている。
それゆえ、
CA、CBの双方はABに等しい。
【・・・(1)】
-
前節、前々節
による。
-
CA=AB、CB=AB
となっている。
ところで
同じものに等しいものは
互いにも等しい。
-
公理1ー1(同じものに等しい)
のことである。
原論では、
定義、公準、公理、命題等を参照する
のに、
番号や記号を用いず、
このように、
簡潔な表現をもって参照する。
ゆえに
CAもCBに等しい。
-
前節、前々節、
公理1ー1(同じものに等しい)
による。
したがって、
3線分CA、AB、BCは
互いに等しい。
-
前節、(1)による。
-
原論において
は、
3つのものが互いに等しい
ことを言うために、
2つずつ組を作って
すべての組み合わせにおいて等しい
ことを丁寧に論証している。
-
CA=AB、AB=BC、BC=CA
となっている。
よって
三角形ABCは等辺である。
-
前節、
定義1ー20(等辺・二等辺・不等辺三角形)
による。
しかも、
与えられた線分AB上に作られている。
-
線分AB;△ABCの辺
による。
- 以上が第四段階である。
これが作図すべきものであった。
-
最後に、
第五段階として、
この一文が入る。
以上の五段階が
原論の標準的な論証スタイルである。
- 命題1ー1は、
線分AB
に対し、
C;交点(円(A,AB),円(B,BA))
をとるならば、
△ABC;等辺三角形(正三角形)
のことである。
- 命題1ー1は、作図用命題である。
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